熊野神社 (くまのじんじゃ)

古事記に「故(かれ)、其の神避りし伊邪那美神は出雲国と伯伎国との境、比婆の山に葬りき」とある比婆山を伊邪那美神の御陵と仰ぎ奥院という。

 当熊野神社はその南西面参道の遥拝所にあたる。社伝に「創建不詳、和銅六年(西暦713年)までは比婆大神社と称し、嘉祥元年(西暦848年)社号を熊野神社と改称す」とあり。その後遥かに星霜を経て、文亀二年(西暦1502年)奴可郡西条保久里村大檀那源親盛社殿造立、永正十五年(西暦1518年)大檀那源尚盛社殿造立、天正四年(西暦1576年)怒恕郡西条保久里村大檀那源朝臣智盛社殿再興の棟札三枚が現存している。

 明治期に入り官幣大社に昇格運動起こり内務省に請願。大正13年第四十六回帝国議会において「比婆山熊野神社昇格に関する建議案」採択。昭和14年第七十四回帝国議会において「備後比婆山に伊邪那美神を奉祀する官幣大社建立に関する請願案」採択。やがて時局大変転して今に至る。

 広大な神域の百株を越える巨杉郡叢は、森厳な古社の風致を構成し、内十一本の老杉は昭和27年に広島県天然記念物に指定されている。(境内案内板より)

 

磐境(いわさか)

磐境は、巨石に霊があると信じられていた古代の祭祀を行う場所のことで、奈良時代天平5年(西暦733年)に熊野神社の前称である比婆大神社が創建されるまで、比婆山御陵の祭儀がこの場所で行われていたと伝えられる。高さ約5m、周囲約23mで、そばの大杉の根本にある祠は、もとは大岩の上に祀られていた。(境内案内板より)

鳥尾の滝(ちょうのおのたき)

熊野神社から竜王山への登山道沿いにある高さ30m余りの滝です。その姿が尾長鳥の尾を連想させるところから、島根県奥出雲町の船通山にある「鳥上滝」に対して「鳥尾の滝」と呼ばれます。別名「那智の滝」といわれています

熊野神社の老杉群

比婆山の南麓に鎮座する熊野神社の創建は不詳だが、713年以前は「比婆山大神社」と称されていたという。古くは能野修験者の聖地として開かれ、江戸時代には伊邪那美命の 比婆山御陵 の南口遙拝所として信仰を集めてきた。 境内には天を突くように聳える多数の大杉が社叢を形成しており、古くからの景観を今に残している。 老杉群のなかには、樹齢1000年を越えるものもあるとされ、大きなものでは幹周8.2mと記される巨杉が現存している。

境内にある100本ほどの老杉群の中から、幹周5m以上のスギ11本が「熊野神社の老杉群」として、昭和27年に広島県の天然記念物に指定されている。

天狗の休み木(てんぐのやすみぎ)

広島県下大2位の大きさを誇るこの老杉は、天狗の休み木と呼ばれている。夏の夜、時折この境内に、天狗の使う団扇の音が聞かれたという。地元の言い伝えでは、二宮前、磐境(いわさか)の傍らに立つ根元から2本に分かれた老杉が天狗の休み木であるともいう。